鬼人国

ひまわり(ぶらんくのーと)、ティンクル☆くるせいだーす、探偵オペラミルキィホームズ、魔法少女まどか☆マギカ、ストライクウィッチーズ、ワンダープロジェクトJ2、大帝国

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作品一覧

☆続きモノ


○ひまわり ・『うちの姉が働かない』『水瓶座は歌えない』『この星の空は青くはない』


○クルくる ・『パスタの冒険シリーズ(仮題)』


○まどか  ・『ほむほむ絵日記』 ・『礼拝少女』


○ミルキィ ・『氷の瞳』


○ストパン ・『望郷のノクターン』『サーニャのおっぱいを触る五つの方法』


○WPJ ・『やっぱりキミをほっとけない』


○大帝国 ・『王さまとお姫さま』


☆単発


○ひまわり ・『悪党どもは眠らない』 ・『嫁のメシがマズい』 ・『宇宙人談義』



○まどか ・『魔女の卓球台』 ・『魔法少女は必殺技がほしい』 ・『魔法少女は胃腸が弱い』 ・『泥棒猫のワルツ』


○ミルキィ ・『ハーレムオペラ』 ・『探偵と怪盗の境界』




一言:やっぱり大帝国で一つ書こう。


  1. 2037/04/02(木) 01:48:28|
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王さまとお姫さま エイリス編11

ガキの頃の話だ。

まだ俺の顔面に、ナイフで刻まれたドでかい切り傷がなかった頃の話。



腕っ節しか取り得のねえゴクツブシの俺が、学校にも行けず、親にも見捨てられて、なし崩し的にギャングの世界に入って数年。

周囲に疎まれながらもボスには気に入られ、その世界でどんどんのし上がっていった。

きたねえ仕事を山ほどやった。

物を盗んだ。人を騙した。人を殺した。

俺には悪事の才能とリーダーシップがあった。

自慢じゃねえがガキの時分からもう、悪党の中じゃ天才の部類だったぜ。

そんなある日、ボスが自分の娘と、俺との縁談を持ってきやがった。

その時には既に組織のナンバーツーだった俺だが、これで名実ともに次のカシラってわけだ。

ボスの娘は美しかった。

その上話してみりゃ、この道の人間とはとても思えねえ、虫も殺さねえような優しい女じゃねえか。

愛していた、なんてことは言えねえがな。

なんとなく。

こんな女と結婚できる俺は、クズにしちゃ相当幸せな部類なんじゃねえかなって、そんなことを思いもしたぜ。


結婚式の、当日のことだ。

教会に入った俺を迎えたのは、ボスと娘の血で染まった真っ赤な絨毯だった。

肉片と弾痕で彩られた教会は、この世のものとは思えねえサイコーの風情だったぜ。

そしてワラワラと現れたのは、完全武装した俺の「仲間」たち。

すぐには状況がわからなかったぜ。

こいつらが俺を裏切ったなんてよ。

嫌われてるのは、わかってたさ。

殺すなら、さっさと殺せばいいさ。

でも、なあ。

なんでだ?

なんで、「今」なんだ?

俺がよぉ、少しはマシな人生になるかもな、なんて思ったところじゃねえか。

よりによってその瞬間にブチ壊す必要があったかよ?

殺すなら、もっと早く殺してくれよ。

希望なんて、持たせないでくれよ。

なあ。

なあ!?


連中は笑いながら俺の腕を圧し折り、ナイフを筆に、俺の背中をキャンバスにして、一生消えない真っ赤なネズミのイラストを描いた。

そして俺の眼球を狙って、顔面を縦に切り裂く二本の線を入れた。

俺は死んだフリをしてスキをつき、連中から銃を奪い取って皆殺しにした。

だから、さ。

お前を助けたのは、そのせいさ、プリンセス。

俺は教会には、ちょっとした思い出があるんだよ。



背中の傷は刺青になった。

顔の傷痕は異名になった。

神の眼前で拷問され、全て失った俺は神を憎んだ。

不幸だなんて言わねえさ。

それなりの人生を歩んできたわけだからよ。

でも、さ。

せめて憎ませてくれ。

神を。

この俺のクソッタレな人生を。

憎ませてくれ。

憎いんだ。

その権利が、俺にはあるはずだ。

クレイジーでもいい。

この孤独と憎悪だけが、俺の人生を貫く、たった一つの真実なんだから……。





――――



始まったのは戦争ではなく、捕食だった。

泳ぐように接近した富嶽の大顎は人工大怪獣の頭部を捉え、その最新鋭の装甲を飴細工のように粉々に噛み砕く。


トルーマン『なっ、バカなあああああああ!!』


宇宙に響くのは神を騙った大罪人の悲鳴と、機械仕掛けの神が放つ断末魔の咆哮だけ。

抵抗しようともがくヴァージニアの右腕に、小惑星さえ抉り取る富嶽の吐息が直撃した。

ヴァージニアは折れ曲がった右腕を押さえて、後退りながら胸部のミサイル発射管を開こうとするが、富嶽は逃がさない。

高速巡洋艦すら遥かに凌ぐ速度で距離を詰め、隆起した頭部で体当たりを仕掛ける。絶大な質量差にヴァージニアは吹き飛ばされ、砕け散った破片がデブリとなって宇宙の果てに消えていく。


トルーマン『ま、まて、まってくれえ!!』


取り乱した声。

俺にはわかる。負けることなど考えていなかったヤツほど、自分が不利になると決まってこうなりやがる。


トルーマン『私は神だぞ!!人類を浄化する高貴な使命を帯びた私を、こ、こ、殺すのか!?』

帝『……』

トルーマン『やめろ!や、やめてくれ!!まだ、私はまだ、死ぬわけには……』


そら来た。

命乞いだ。

笑いが込み上げる。

ざまあみろ、だ。


帝『富嶽』

トルーマン『ま、まて!!』

帝『やって!!』

トルーマン『やめろおおおおおおッ!!』


富嶽の目が輝く。

その巨体を中心に空間が歪み、目に見えない波のようなものが拡散していく。

波は放射状に拡散しながら少しずつ寄り集まり、指向性を持ったエネルギー波となってヴァージニアに注ぎ込まれる。

殺人教祖の悲鳴の後を引きながら。

そこで映像は終わった。




リンカーン「……クク」


広場は大騒ぎになっていた。

コアが倒された喜び。

日本軍が大怪獣を持ち出したことへの疑問。

そして今確実に、全人類が滅亡するほどの危機が去ったこと。

全てが興奮となってエイリス国民を包んでいた。

きっと、世界中がこんな状況なんだろうな。

まったく。

本当に……。



リンカーン「なあ、プリン、セス」

プリンセス「……」

リンカーン「きに、くわ、ねえ」



見えない。

もう目の前にあるはずのプリンセスの顔が見えなかった。

真っ白だ。

あいつのちっさな身体を、この腕に抱いているはずなのに。


リンカーン「ぁ……」


声も出ねえ。

今、俺が思っていることを、こいつに伝えたかったのに。

ああ、それでも。

それでもだ。

俺は既に感触のない腕で、そこにあるかもわからないプリンセスの頭を、手探りで撫でつける。


リンカーン(伝わっただろ、プリンセス)


そうだ。

昔は言葉なんか交わさなくたって、お互い分かり合えたじゃねえか。

いや、そうでもなかったか?

はは、昔のことは、もう言うなよ。

なあ、聞けよ。

プリンセス。

今、一つだけ確信したことがあるんだ。

悪党のカンだ、必ず当たる。




お前は、死なない。




お前は、生き残る。

だって、なあ。

そうだろう?

足を思いっきり千切られて、血がドボドボ流れてるってのに、まだ神が憎くて足を止めちまう、その根性のまま死ねるわけがねえよ。

だから、さ。

忘れるなよ、あの約束を。

俺たちは。

『自分だけを信じて生きていく』ってな。

それは要するに、だ。

あの東郷と、帝の野郎が、宇宙の彼方で、恥ずかしげもなく叫んでいたのと、おんなじさ。

自分の道は自分で拓く、ってな。

なんでアイツにムカついたのか、ようやくわかったぜ。

あいつと俺たちが、同じだからだ。

正義も神もありゃしねえって、あいつはちゃんとわかってるのさ。

同じだからこそ、ムカつくんだって。

同じなのに、俺たちよりも上手くやってるアイツがムカつくんだって。

なあ、プリンセス。

お前もそう思うだろ?




もう息が吸えなかった。

苦しい。

痛い。

泣きたい。

なのに泣けなかった。

死にたくねえ。

……死にたくねえ。

そう思ってプリンセスを抱き締めようとしたが、もう力が入らないし、感覚さえわからない。

神さまがようやく、この俺様にバツを下した。

今日まで何度も想った死の瞬間は、やっぱり苦痛しかねえクソッタレな代物だった。

大声で。

空気が通る音しかしない、壊れたオモチャみてえなノドで。

俺はバースデイソングを歌った。

もちろん、まるで歌えちゃいねえが、むりやり歌った気分になった。


リンカーン「ハ……ピ……ディ……トゥ……ユ」


あばよ。

クソッタレな世界とも、これでおさらば。

清々するぜ。

あとの始末は。

プリンセス。

頼んだぜ。

俺の……相棒。



リンカーン「……バ……ディ……トゥ……」

リンカーン「ピ……バ……デイ…………ィア……ハ、ハハ……」

リンカーン「しあ……わせ、か」

リンカーン「おれ、も……だ……ハ、ハハ……ハ」





そこまでだった。

苦痛は唐突に終わりを告げ、全てが無に消えていった。








(続く)


  1. 2011/11/14(月) 07:59:55|
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王さまとお姫さま エイリス編10

燃える。

空が燃える。

世界が燃える。

命が、燃える。

破壊の神は両手を広げ、全てを殺し尽くしていく。

その光景を、ただ呆けたように見上げていた。

白い巨竜。

人工の神。

クソッタレの、神。


プリンセス「……」

リンカーン「……どう、した?」


声が掠れる。意識が朦朧としていた。

そのせいで、背中におぶったプリンセスが、俺の耳元で囁いた言葉を聞き逃した。

――――見たい。

そう聞こえたような気がするが、或いは、何も言っていなかったのかもしれない。


リンカーン「ハハ、いいぜ。こんな見世物、めったにあるもんじゃ、ねえもんな」

プリンセス「……」


まぁ、いいさ。

見て行こう。

どのみち、もう歩けそうにねえ。

周囲を見回し、手近な石柱のモニュメントを見つける。

プリンセスを身体の正面に移して両手で抱え、背中からモニュメントに寄りかかり、ズリ落ちるようにして座り込んだ。

お姫さまだっこ、ってやつだ。

なかなかどうして、おあつらえ向きじゃねえか。


リンカーン「……見えるか、プリンセス」

プリンセス「……」


相変わらず答えはない。プリンセスはただ、仰向けに抱かれたまま虚ろに空を見つめている。

俺たちが歩いてきた道を見ると、そこらじゅうに血だまりが出来ていた。

だが、周囲に人が溢れているにも関わらず、それを見咎めるものはない。

片足のないプリンセスにも、片目を撃ち抜かれた俺にも、誰も目もくれずに空を見上げている。

そりゃそうだ。

そうだよなあ。

俺たちなんて、いてもいなくても、変わりゃしない。

そんなもんだ。


リンカーン「見て、おこうぜ、プリンセス」

プリンセス「……」

リンカーン「どっちが、勝とうが、おもしれえや、はは」

プリンセス「……」

リンカーン「どうせ……な」

プリンセス「……」

リンカーン「何も変わりは、しねえんだからよ……」




―――――


日本軍からの退避勧告は既に止んでいた。

見ればわかるけど、もう戦場の隅のちっさな艦を気に掛ける余裕などなくなったらしい。

あたしはもう、戦場の炎に手が届くところまで接近している。

いつ死ぬかわからないし、さっさとやってしまおう、とマイクを取り咳払い。



リットン「あー、あー、テステス……」

リットン「この取材用の連絡艇では、これ以上、戦場に近付くことができないようだ」

リットン「視聴者の皆様には見えているだろうか? あそこで繰り広げられているのが、日本軍と人工大怪獣との決戦だ」

リットン「例え流れ弾が頬を掠めようとも、あたしは視聴者に真実を伝えるために戦う」

リットン「あたしはリットン。リーザ・リットン。ガメリカのリポーターだ」



そこまで言い切りながらも、視線は宇宙の先、今まで見たこともないような激しい戦場へ釘付けだ。

現在地・日本。本星。その周辺宙域。

あのヴァージニアとかいうガメリカの秘密兵器は、コアに乗っ取られたあとワシントンから日本に向けて直進、通りすがりの星域に甚大な破壊をもたらしながら、あっという間にここまで侵攻してきた。

単騎だ。

ガメリカを追い詰めた世界最強の日本軍でさえ、たった一騎を止められないでいる。

しかし、この世界に生きる者ならわかるだろう。

人工とはいえ『大怪獣』を止められるものなど、この世に存在しないってこと。



リットン「この宙域には東郷毅長官率いる、日本の主力部隊が展開していた」

リットン「それが今はご覧の通り、恐慌を来たして散り散りとなり……うっひい!!?」


アラート。反応する間もなく光熱の帯が艦体の上部を通過した。

ヴァージニアが咆哮と共にレーザーを照射し、そのまま周囲を薙ぎ払ったのだ。装甲が一部融解し、機体温度が異常に上昇する。


リットン「あっぶな……えっと、どこまで話したっけ。あ、あー、そうだ、散り散りとなり、陣形もへったくれもない状況。散発的な反撃をしては、各個撃破されるばかりだ」

リットン「しかし旗艦長門は健在。繰り返す、旗艦長門は健在!」


そう、それだけが希望だった。

ここまでボロボロにされても、最終防衛ラインだけは頑として崩れていない。

戦艦長門もそこにいる。

東郷毅、あの男なら。

何か奇策でもって、あの怪獣を倒してくれるのではないか……という、淡い期待がある。

それは恐らく、全世界の人々に少なからず共有されている感情だろう。

いや、期待せずにはいられない。

だって日本が突破されれば、冗談抜きで本当に、世界の終わりの始まりなんだから。


リットン「あ、また!?」


ヴァージニアが火炎を吐き出す。

いや、一見炎に見えるそれは、無数のミサイルが発する推進剤の燃える光だ。

何度吐いても尽きないミサイルの群れは、前方の空間を覆い尽くすように展開した後、超高速で日本軍に殺到する。

それを見て日本軍が動く。矢面に立つのはミサイル妨害艦。

大怪獣を相手にするために入念に対策を練ったのだろう。訓練された鮮やかな動きだった。

妨害電波は正常に機能を発揮し、強力なジャミングを受けたミサイル群は、その殆どが軌道を外れて無力化された。


トルーマン『おのれ、神に逆らう背信者どもめが……!!』


宇宙を揺るがす大音声。

人工大怪獣のパイロットは外部スピーカーをむき出しにして、戦闘中にも関わらず自分の音声を垂れ流しにしていた。

その隙を見て、大怪獣の右手側に展開した戦艦群が一斉にレーザーを放つ。

だが、頼りない攻撃だ。大怪獣は軽く右手を払うような動作をして、それだけで全ての攻撃を無効化した。


トルーマン『何をしても無駄だとまだわからぬか!?』


大怪獣の瞳が輝いた。と思った瞬間、そこから一直線に極太の可視光が放たれる。

先の日本軍の攻撃とは比較にならないほどの巨大な光条。

瞬きする間もなく暗い宇宙に一条の帯を引いたそれは、何に遮られることもなく長長距離で構えている戦艦長門を直撃した。


リットン「ああっ、長門が!!」


禍々しいほどに強烈な光の渦に呑まれる戦艦長門の姿を、私は確実にファインダーの中に収めていた。

あまりにも特ダネすぎる。

さすが私。

でも、ダメだ。

終わった。

これで日本軍は総崩れだ。


トルーマン『しぶといゴキブリどもめが……!!』

リットン「……へ?」


苛立つ悪魔の声に、我に返る。

気を取り直してコンソールに向かい、メインディスプレイにぐっと顔を近づける。

大怪獣が放った破壊の光が通り過ぎた跡。

戦艦長門がそれまでと変わらない威容を誇ったまま、一歩も退かずに同じ場所に鎮座していた。



トルーマン『どうやら、直接握り潰してほしいようだな。グハ、グハハハッ!!』


大怪獣の動きが変わる。

身体ごと前に出す前傾姿勢で、長い尾を蛇行させながら標的に鋭く牙を剥く。

戦艦長門をその手で叩き潰すべく、群がる駆逐艦をハエのように打ち払いながら、猛スピードで最終防衛ラインに向かい始めた。


トルーマン『神の加護なき貴様らでは、このヴァージニアを止めることなどできんのだ!』


遠くから見ているだけで震え上がるほどの巨竜の猛追。

にも関わらず、戦艦長門は沈黙している。

反撃すらしない。ただじっと、その場で静かに構えている。


リットン「ヴァ、ヴァージニアが最後の攻勢に出た!日本軍、動きなし!!」


動かない。

動かない!

黙っていたらやられるだけなのに、どうして動かないんだ!?

まさか、本当に。

ここで終わり?

うわあ。

まさかあたしが生きてるうちに人類滅亡を見る羽目になるとはね。


トルーマン『死ね、死ね、死ねえええええええ!!!!』

リットン「は、は、ははは……いいぜぇ、やってやるよ」

トルーマン『死こそ救済!!穢れた人類よ、我が手で悉く神の御許へ行くがいい!!』

リットン「リポーター冥利に尽きるってもんだーーーーーッ!!!」


――――


柱にもたれて見上げるディスプレイから、誰とも知らねえやかましい女の声が響く。

意識は飛びかけであやふやな聴覚だが、あそこで戦っているのは日本軍で、その場に東郷毅もいるらしいことはわかった。


リンカーン「なあ、起きてるか、プリンセス」

プリンセス「……」

リンカーン「俺たちは、どうやら運がいいぜ、クク」


プリンセスの柔らかな髪をなでながら、俺は本心からほくそ笑んだ。

何の運がいいかって?

そりゃ、あれだ。

「東郷毅の死に様が見られる」。

あの気に食わねえ野郎の死に様だ。

最高に胸が空くってもんじゃねえか。

なあ、お前もイカれちまえよ。

ミスタートーゴー。


リンカーン「プリンセス、ちゃんと、見ているか?」

プリンセス「……」


プリンセスは薄く目を開けている。

さっきからピクリとも動かないもんだから、もう死んだのかと思ったが、そうじゃねえ。

その目には或る感情が篭っている。

怒りだ。

プリンセスが発する身を焦がすほどの怒りを、俺はお互いの身体が触れ合う箇所から痛いほどに感じていた。


トルーマン『この世界を浄化する。それが神の思し召しなのだ!!』


野外だってのによく響く、でけえ声だ。

そう、プリンセスの機嫌が悪いのは、あいつのせいだ。

あいつが神、神と連呼するからいけない。

プリンセスの神サマ嫌いは、どうやら俺以上らしい。


トルーマン『誰も救われないこの世界を変えるのだ!!汚れた人間どもよ、神に従い浄化を受けよ!!』

リンカーン「クク」


神、か。

ああ、勘違いしていた。

やっぱり、違うんだよ。

あいつの言う神は、本当の神じゃねえ。


トルーマン『苦しめ!苦しんで死ね!!血と臓物と共に汚れた魂を解放しろ!!』


だって、優しすぎるだろ。

あいつの言う神サマは。

誰もが死ねば平等だって?

死ねば救われるって?

おめでたい考えだ。

理想の神サマってヤツだな。

だがな。

本当の神サマってのは、そうじゃねえんだ。


トルーマン『ハッハッハ!!ハーーッハッハッハッハ!!』


本当の神サマってのはな。

『選ばれた幸せ者だけを救う』のさ。

自分が気に入ったヤツだけを助けて、他は全部まとめてゴミ溜めに叩き落すのさ。

そして幸せものが幸せになるのを見て喜び、その一方で、不幸な奴らがゴミためで腐って死ぬのを見て腹を抱えて嗤うのさ。


リンカーン「なあ、わかるだろ?プリンセス」

プリンセス「……」


だから、なあ?

俺は何度も言っただろ?

この世に神はいねえのさ。

あいつの言う、全てを救済してくれるお優しい神サマなんて、この世のどこにもいやしねえんだ。

いるのは、俺をクソまみれにして喜んで。

俺の僅かな幸せさえも、平気で踏みつけにして喜んで。

その上、クソったれな殺人鬼の俺に、無惨に殺される連中を見て喜ぶようなヤツだけだ。

……。

認めねえ。

認められるかよ。

そんなヤツを、俺は神とは認めねえ。

絶対に。

絶対に……!!


トルーマン『神の威光を恐れろ!!非力な人間どもめが!!』

リンカーン「神サマなんてのは、クソっくらえだ……」

トルーマン『神を信じて救済を受けろ!!!』

リンカーン「この世に神はいねえ!!!」


知らずに叫んでいた。

広場に立つ人の群れは、誰もこちらに見向きもしない。

静寂に掻き消え、潰えていく俺の声。


東郷『いいや、この世に神などいない』


それを追うようにして、聞き覚えのある声。

プリンセスの瞳が僅かに動いた。

それを追って、俺も下ろしていた視線を上向ける。


トルーマン『な、にィ……!?』

東郷『神様なんていやしない。だから、だからこそ、だ』


変わらずそこにある、夜空を跨ぐスクリーンの中。

映し出されるのは、巨竜の前に立ち塞がる、爪先ほどのちっぽけな戦艦。

軽く一回つつかれただけで、バラバラになりそうなひ弱な存在。

巨竜は猫で、戦艦はネズミだった。

太陽のようなフラッグを掲げて、今にも沈みそうな傷を抱えて、その戦艦の主は吼えた。


東郷『だから、俺たちは!!』

トルーマン『は!?』


突如。

戦艦長門、その背後。

時空が歪み、空間が繋がる。ワープゲートの反応、時空の裂け目から唐突に現れたのは、白く無骨な鼻先。

ズルズルと引き摺るように、しかし一瞬でその全貌が露になる。



トルーマン『こ、これはあ!?』



赤い瞳を輝かせて、それはその宙域に出現した。

白い身体。兜のような頭部に生気の霧を纏い、鋭い牙の生えた口を物欲しげに開閉している。

その影が人工大怪獣を覆いつくすほどに巨大であることを確認した時、俺はアレの正体を理解した。

星を喰らうカイブツ。


東郷『帝ちゃん!!』

帝『ええ、東郷!自分の道は、自分の手で切り開きます!!』

トルーマン『本物の大怪獣、だとおおおお!!?』


そうだ。

大怪獣が日本軍の味方をしている。

そうして二体の巨獣が睨み合う。

信じられない光景だ。

まるで現実感がなかった。

突然の出来事に、目に見えて怯んでいる巨竜が体勢を立て直す前に。



帝『やりなさい、富嶽!!』



澄んだ声。女の号令が世界に響く。

それを合図に、惑星を叩き割る長大な尾、一掻きで宇宙の運行さえ乱す胸ヒレを全力で稼動させ、富嶽と呼ばれたクジラの怪物は踊るように対敵に襲い掛かった。




(続く)
  1. 2011/11/04(金) 12:19:08|
  2. 大帝国
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王さまとお姫さま エイリス編9

プリンセスがヤツを見つけるより先に、俺はヤツの姿を視認していた。

ビルの上。物欲しそうなツラで、フラフラと通りを歩くプリンセスを見下ろしている。

俺には気付いていない。食欲と獲物への執着心が、ヤツの嗅覚を潰している。

それを確認した後、静かに行動を開始した。



今日は霧が濃い。

そもそも遠距離から狙撃するような装備ではなかったが、どのみち遠くには陣取れそうにない。

交差路で立ち止まったプリンセス、その後方のアバラ屋に隠れて、狙いやすい位置を見定める。北向きの窓。砕けた窓ガラス。

全身にボロ布を纏ってカムフラージュをし、破れたカーテンの隙間からグレネードを装填したライフルを構えた直後、惨劇が始まった。




プリンセスの小さな身体が、薄汚れたアスファルトの路地の上をボロキレのように転がっていく。

予想通り、ヤツはプリンセスをいたぶってから食うことにしたようだ。

俺はヤツが口を開けるのを待った。

プリンセスの苦悶の声を聞き、恐怖にひきつる顔を見つめながら。

待った。

待った。

……待った。

永遠のような時間を待った。



プリンセスがヤツに向けて啖呵を切ったのが見えた。

直後、プリンセスの左足が切断された。

奥歯が欠けるほど歯軋りをする。

俺は焦っていた。

焦る?

何を?

そうだ。

チャンス。

チャンスはまだか?




チャンスはすぐ訪れた。

ヤツがプリンセスの左足を食うために大口を開ける。

狙いは完璧。

トリガーを引こうとして。

できなかった。

今、撃てば、ヤツを殺せる。

だが同時に、間近にいるプリンセスの身体も弾け飛ぶ。

俺は。

自分を殺したくなった。

なあ、リンカーンよ。

極悪非道の犯罪者。

たった一人の仲間さえ裏切ったクズ野郎。

プリンセスが死んじまうって?

最初からそのつもりだっただろうが!!

早く引き金を引け、全てを無駄にするつもりか!?




それでも。

俺は待った。

何を?

……何を待っている?

それさえわからないまま、ただヤツの顔面に狙いを定めて微動だにしない石像となった。




プリンセス『テメエなんかより、オレの方が!! 百倍クレイジーだっつってんだよ!!』




果たして奇跡は起こった。

最高のチャンスに、俺は迷わず引き金を引き、ヤツの口内に装甲板を貫く66mmHEAT弾を叩き込む。

ヤツの姿が炎に包まれる。だが、まだ倒れない。

もう一発。次弾を装填、そこでヤツの視線が俺を捉えた。

衝撃により大半がバラバラになったアーム、その中でも無事な一本に集光レンズと短い砲身。こちらに向けられる。対人レーザー砲。マズい。

閃光。

そこから放たれた光条は一瞬で俺の脳、髄を焼、き切っ、た。

熱い。

撃たれた。頭部。

左目が、見えない。

……致命傷、か。

かまわない。

まだ撃てる。

霞む視界、震える指に力を込めて、俺は止めの一射を放った。

勘に頼った一撃。

まさしく、神頼み。

まるで最初からそうなることが決まっていたかのように。

顎関節が外れたヤツの口から飛び込んだ次弾は、狙い寸分違わずその超合金のボディを内部から破壊し、完全に爆散させた。





今、俺はイモムシのようになったプリンセスを見下ろしている。

左膝の切断面から、井戸の水を汲み取るようにドス黒い血が流れ出し地面を汚していた。


リンカーン「いいザマだな、プリンセス」


返事はない。ただ薄っすらと目が開いた。

どうやら意識はあるらしい。本当に、タフな野郎だ。


リンカーン「おい、死ぬのかよ?」

プリンセス「……」


動かない。ビー玉のような、うつろな瞳が俺を見つめている。

俺は自分のシャツの袖を引き裂いた。

その布切れでヒモを作る。それでプリンセスの左足の傷口を縛った。

簡単な止血だ。何の意味もねえだろうがな。


プリンセス「……ッ」

リンカーン「あ?何か……言ったか?」


さっきから意識が朦朧としやがる。

地面を染めているのはプリンセスの血液だけじゃねえ。

頬を伝い顎から流れ落ちる生温い感触。視界の左半分がない。

さっき受けた銃創は頭部を貫通しているようだ。

身体がひどくだるかった。

でも、プリンセスが、何か言いたげに。

苦しげな吐息をしながら、口をぱく付かせるもんだから、俺はしかたなく、その口元に耳を寄せてやった。


リンカーン「言いてえことが、あんなら、はっきり言えよ」


そして、プリンセスは青褪めた顔、色の失せた唇のまま、震える声で、その言葉を口にした。


プリンセス「――――」

リンカーン「……」



はっきりと聞こえた、その言葉。

俺は呆気に取られて、言葉を返すことができなかった。

腹の底からせり上がった疑問はノドを通り過ぎ、俺の脳天を直撃する。

今はない左目が痛む。血が溢れ続ける銃創から、噴水のように血が噴き出した、ような気がした。


リンカーン「おめえ……バカかよ……」


プリンセスは微笑む。

俺の世界のお姫さま。

あんなバケモノのエサにされて、足をもがれて、無様に死ぬ直前のお前が。

そんなお前が。







――私は、幸せでした。








リンカーン「どうして……」

プリンセス「……」


どうして、こんな台詞が言えるのだろう。

こいつは知らない。俺との約束なんて覚えていない。

俺がどんなクソ野郎か、まるでわかっちゃいねえんだ。

ほんの少しだ。

ほんの少し優しくされただけで、こいつは、こんな簡単に騙されやがったのか?

プリンセスの手が、ゆっくりと持ち上がり、俺の頬をなでた。

その指についた雫を見て、俺は初めて、自分が泣いていることに気付いた。

左目の痕から流れるのは血涙。右目から流れるのは透明な涙。

最後に泣いた日のことを、俺はよく覚えている。

まだガキの頃、結婚式だ。

仲間に裏切られ、血の涙を流した。

あの日から、世界は神に見放された地獄に変わった。



リンカーン「死ぬな」

プリンセス「……」

リンカーン「死ぬなよ」



俺はプリンセスの身体に腕を回し、身体を屈めてそのまま背負った。

姿勢がフラつく。足一本を失くしたプリンセスの身体は亡霊のように軽い。

それでも、今の俺には巨大な鉄の塊と同じく感じられた。

歯を食い縛り、吹き飛ぼうとする意識を繋ぎ止めながら、努めて優しく声を出す。


リンカーン「お前は……よくやってくれた」

プリンセス「……」

リンカーン「少し、我慢してろよ。そんな簡単に、死ぬんじゃねえ」


反応はない。

気にせず、歩き出す。

一歩。

また一歩。

どこに行けばいい?

こいつをどこに連れてきゃいいんだ。

……中央広場だ。

とにかく……人がいるところへ……。





夜。いつのまにか星が降っていた。

漆黒の空に輝く星たち。光っては消え、燃えては消える。

やけに静かだった。

周囲にはたくさんのエイリス人ども。だがみな一様に呆けたツラで空を見上げて、彫像のように静まり返っている。

俺の背中のプリンセスも、もうずっと死んだように黙っている。


リンカーン「見ろ、プリンセス。星が燃えてやがる」

プリンセス「……」


違った。

黒い天蓋に映る光は星ではない。

あれはスクリーンだ。

日本で見たのと同じ、空に跨る巨大投影スクリーン。

夜空いっぱいに広がるそれが描き出すのは戦場の景色。

遠近感がなく、ぼやける視界の俺にも伝わってくる、殺し合いの興奮。

なのにオーディエンスが呆けているのは、あそこに映る光景が、決して他人事ではないからだ。

ノイズに紛れて聞こえる。


トルーマン『ハ……ハ……』


神の声が。

白い巨体。

モニターの中。夜の帳と同じ色をした宙海を、巨大な竜が泳いでいる。

人工大怪獣ヴァージニア。


トルーマン『ハハハハハハハハハッ!!』


腕を振るい、炎を吐き、遮るものを引き潰して竜は進む。

俺はようやく、この状況を理解した。

今、俺の頭上で繰り広げられているもの。

これはワールドエンドのショータイムだ。

イカれた機械人形どもが、人類を滅ぼすその瞬間だ。

しみったれた観客ばかりなのも頷けるってもんだ。


トルーマン『死ね!死ね死ね人間どもよ!!一人残らず、神の御許に送ってやるわ!!ハーッハッハッハ!!』



いったい誰がカメラを回してるんだか。

美しい夜空に投影され、星に彩られた殺戮ショーは続く。

俺はもう知っている。

その星の一つ一つが、数百の脆い命を乗せる戦艦たちの輝きだ。

背中のプリンセスがピクリと身じろぎして。

億劫そうに、空を見上げた。




(続く)
  1. 2011/10/19(水) 00:00:42|
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王さまとお姫さま エイリス編8

ピチャピチャと響く水音は自分の血液。

気絶するかと思ったのに、できなかった。さっき打たれた奇妙な薬剤のせいだ。

ノドがカラカラで、もう痛みと絶望に泣き叫ぶことすらできない。

目の前には恍惚とした緑の怪物。左手で私を吊るし上げたまま……右手に、何かを持っている。


マッキンリー「アー、ヤッパリ小サナ子供ガ泣き叫ぶ声ハ最高デスネ〜」


ゴミでもつまむように指の間に挟まれているのは、か細い棒状の肉塊。

肉塊は靴を履いている。赤にまみれてユラユラと揺れるソレが、膝上から切断された自分の左足だと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

意識ははっきりしていた。

苦痛と恐怖、大腿動脈から流れ出ていく血の一滴さえしっかりと感じられる。


マッキンリー「オ食事ハ、オ行儀ヨク。ステーキハ少シズツ切リ分ケテ食ベマス。真ッ赤ナデミグラスソースモ添エテ〜」


楽しそうに唄いながら、私の左腿の切断面に、千切れた足を擦り付ける。

露出した骨がゴリゴリと音を立て、そのたびに激痛と反射で身体が震える。

ビクン、ビクン。

人形みたいに。

私は吐瀉した。

ごはんは抜いてきたから、胃の中はからっぽ。

私の胃液がボディを汚すのも構わず、怪物は食事を始めた。


マッキンリー「ア〜ン」


大口を開ける。

醜く肥え太った身体。醜悪な人食い鬼。

その口の中に、まるで肉屋の店先にぶらさがった精肉のような、今やただの死んだ肉塊となった、私の左足が、飲み込まれていく。

鋭い牙が鈍く輝き、私をそのまま飲み込めるほどの、大きな口。

大きな、口。

……隙だらけだ。

私は自分の口角が釣り上がるのを感じた。







キングの口癖。


リンカーン『この世に神はいねえ』


私の頭をなでながら、何度もこう言った。


リンカーン『もしも神サマがいんなら、俺みたいなクズは真っ先におっ死んでるはずだろ?』


誰がわかるだろうか。

彼の本心を。

私だけが。

同じ悲しみを持つ私だけが、彼の気持ちを理解できる。

彼はいつも追い詰められていた。

孤独で、仲間に裏切られて、力に頼るしかなくて、孤独で、孤独で、孤独で。

おなかがへっても、誰も優しくしてくれない。ケガをしても、誰も気にしちゃくれない。悲しいときにも誰一人抱き締めてはくれない。

だから殺した。殺して奪って犯して、騙して、他の人を苦しめて。

悪魔のように生きてきた。

そして今。

彼は審判の時を望んでいる。

自分を殺してほしいと願っている。

神様に。

もしも神がいるんなら、俺を殺してみせてみろ。

もしも神様がいるんなら、どうして。

……どうして。

どうして、もっと早く、俺を、救ってくれなかったんだ?





プリンセス「……ッ」

マッキンリー「オオット、オ食事中ハマナーヨク。動イチャダメデス、ギヒ、ギヒヒッ」




そうだ。

彼が。彼自身が。

いつだって、誰よりも強く、心の底から神の存在を望んでいた!!



プリンセス「…………んだ、よ」

マッキンリー「ハア?」


私の背中。服の中。最後に倒れた時に掴んだ、合金製の短パイプ。

右手に握り締める。目の前には切断された私の左足。それに喰らいつこうとする大口。マヌケ顔。

肺にめいっぱい空気を吸い込む。吸い込んで、叩きつける。

私の魂を。

最高に残忍なスマイルに乗せて。


プリンセス「……ってんだよ」

マッキンリー「今更ナニヲ」

プリンセス「テメエなんかより、オレの方が!!」


右手をバケモノの大口の中に突っ込んだ。

反射的に私の腕を噛み切ろうとする。ギシリと金属の軋む音。短パイプがつっかえ棒となり、バケモノの口が閉じられるのを阻んだ。


マッキンリー「アガアアッ!!」

プリンセス「百倍クレイジーだっつってんだよ!!」


拘束が緩む。力の限りに、私の首を固定する巨大な指をこじ開ける。

残された右足で怪物の身体を蹴り、距離を取る。着地ができずに地面の上を転がった。

そこが。

私の限界だった。

もう動けない。

辛うじて仰向けになり、敵の姿を見る。

もがき続ける食人鬼。巨大な顎の上下につっかえ棒となったパイプが、凄まじい咬合力に晒されて少しずつひしゃげていく。

その、口の隙間。


マッキンリー「……ア、アナタ、ハッ!!」


異物が飛び込んだ。小型の弾頭。

次の瞬間。私の視界は爆炎に包まれた。

身体が浮いた。吹き飛ばされ、激しく転がり、何も見えなくなる。

ただ、命が漏れ出る空虚な音だけが聞こえる。自分と、そしてあのバケモノの。



意識はクリアだった。

さっき打たれたクスリのせいだ。

やがて、足音。

少し急ぎ足で、私の方に向かってくる。

その聞きなれた革靴の音を聞きながら。

私は末期の息を吸う。

最期の言葉を考えていた。

お別れの時間だね。

キング。

私の世界の、王さま。

私の世界を救ってくれた……たった一人の。

……私の……神さま……。





(続く)


  1. 2011/10/15(土) 03:49:33|
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